炸裂(SAKU-RETSU)2


俺はDVDを返さなくてはいけない。






炸裂2
〜one year after the SAKU-RETSU














「お前は、もう、大丈夫なのか?」
久々に会ったお前は、開口一番俺にそう訊いた。
「お前は、もう、大丈夫なのか?」と。
「ぜんぜん大丈夫とも言えるし、ぜんぜん大丈夫じゃないとも言える」
 俺がそう答えると、お前は鼻で笑って、俺を憐れみながら安心もしているようだった。
「お前にゃわからんかもしれないがな」俺はつづけた。
「あれだけの炸裂があったんだ。たった一年で大丈夫だなんてはっきり言えるもんじゃないよ」
 ずぶ濡れのお前は腕を組んで悲しい目をしている。
「この国の連中の多くは、きっとこう思ってるんだ。ぜんぜん大丈夫とも言えるし、まだぜんぜん大丈夫じゃない」
 レントンは「よくわからねえ」という顔をしたままだ。
「じゃあ逆に聞くけど、お前はなんでずぶ濡れのままなんだ?」
「写真だからだよ」
それだけ言ってレントンはいなくなった。
 冬の終わりを迎えた東京は、抜けの悪い天気がつづいている。
 土曜日、雨あがりの深夜、自転車で会社から家に向かった。
 日比谷通りを走っていると、やけに空が「赤い」ことに気がつく。
 どうしてこんなに赤いのか、しばらくわからなかった。
 土曜日の深夜、要するにそれは日付をまたいで3月11日だった。
 日比谷通りの空が赤い。
 やがて御成門の交差点にたどりついて、赤い空の発光源に僕は遭遇する。
 霞んだ空に刺さるような赤いタワーは怪獣みたいだった。


お前は



もう、



大丈夫なのか?







炸裂から一年が経った、噤みの午後。





数枚の写真を撮ってから手をあわせて、大丈夫を祈った。
とても静かな時間が過ぎて、それから、DVDを返しにいった。



***


1.レシート/2.雪の上大崎/3.東京タワー(御成門から)/4.新橋/5.NHKⅠ/6〜8.第二京浜/9.聖橋Ⅰ/10.聖橋Ⅱ/11.聖橋Ⅲ/12.洗濯機裏/13.衣紋掛け/14.ベランダの雪/15〜17.目黒駅構内/18〜20.東京タワー(芝公園から)/21.NHKⅡ/22.NHKⅢ/23.NHKⅣ/24.NHKⅤ/25.NHKⅥ/26.27.部屋/28.ベランダの眺め