僭越3(SEN-ETSU) 〜 2014年の映画

1. ダラス・バイヤーズクラブ
  (ジャン=マルク・ヴァレ
2. 新しき世界(パク・フンジョン
3. ビフォア・ミッドナイトリチャード・リンクレイター
4. そこのみにて光輝く(呉美保)
5. her/世界でひとつの彼女スパイク・ジョーンズ
6. 百円の恋(武正晴
7. アクト・オブ・キリング(ジョシュア・オッペンハイマー、クリスティーヌ・シン、匿名)
8. 誰よりも狙われた男アントン・コービン
9. ゴーン・ガールデヴィッド・フィンチャー
10. ラッシュ/プライドと友情(ロン・ハワード


11. ジャージー・ボーイズクリント・イーストウッド
12. インターステラークリストファー・ノーラン
13. テロ、ライブ(キム・ビョンウ)
14. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシージェームズ・ガン
15. 6才のボクが、大人になるまで。リチャード・リンクレイター
16. 罪の手ざわり(ジャ・ジャンクー
17. 喰女(三池崇史
18. X-MEN:フューチャー&パストブライアン・シンガー
19. 泣く男(イ・ジョンボム)
20. 収容病棟(ワン・ビン


21. キャプテン・アメリカ / ウィンターソルジャー(アンソニー・ルッソジョー・ルッソ
22. アメリカン・ハッスルデヴィッド・O・ラッセル
23. 大統領の執事の涙リー・ダニエルズ
24. ベイマックス(ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ)
25. 滝を見に行く(沖田修一
26. インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌ジョエル・コーエンイーサン・コーエン
27. ブルージャスミンウディ・アレン
28. オール・ユー・ニード・イズ・キルダグ・リーマン
29. オーバー・ザ・ブルー・スカイ(フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン)
30. マップ・トゥ・ザ・スターズデヴィッド・クローネンバーグ


31. 私の男(熊切和嘉)
32. 猿の惑星:新世紀マット・リーヴス
33. ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅アレクサンダー・ペイン
34. シャトーブリアンからの手紙(フォルカー・シュレンドフ)
35. レッド・ファミリー(イ・ジュヒョン)
36. GODZILLA ゴジラギャレス・エドワーズ
37. ドラッグ・ウォー 毒戦(ジョニー・トー
38. デビルズ・ノット(アトム・エゴヤン
39. TOKYO TRIBE園子温
40. オールド・ボーイスパイク・リー


41. ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!(エドガー・ライト
42. ぼくたちの家族(石井裕也
43. 怪しい彼女(ファン・ドンヒョク
44. 紙の月(吉田大八)
45. 土竜の唄 潜入捜査官REIJI(三池崇史
46. 0,5ミリ(安藤桃子
47. マイティ・ソー/ダーク・ワールド(アラン・テイラー
48. アナと雪の女王クリス・バックジェニファー・リー
49. 観相師(ハン・ジェリム
50. まほろ駅前狂騒曲(大森立嗣)


51. ホロドフスキーのDUNE(フランク・パヴィッチ)
52. 友よ、さらばと言おう(フレッド・カヴァイエ)
53. 25 NIJYU-GO(鹿島勤)
54. KILLERS/キラーズ(ティモ・ティヤハント、キモ・スタンボエ)
55. ローマ環状線、めぐりゆく人生たち(ジャンフランコ・ロッシ
56. グレース・オブ・モナコ 王妃の切り札(オリヴィエ・ダアン
57. 神さまの言う通り(三池崇史
58. メイジーの瞳(スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル)
59. 渇き。(中島哲也
60. クローズEXPLOSE(豊田利晃


61. DOCUMENTARY OF AKB48 The time has come. 少女たちは、今、その背中に何を想う?(高橋栄樹
62. セデック・バレの真実(タン・シャンジュー)
63. ジャッジ!(永井聡
64. ホットロード(三木孝浩)
65. スノー・ピアサー(ポン・ジュノ

僭越2(SEN-ETSU) 〜 2013年の映画

2013年に劇場で鑑賞した作品の記録と、僭越ながら、面白かった順番。
ランキングつけるのは楽しいからってだけなんですが、つけ終わってあらためて感じるのはランキングって不毛!ってことに尽きます。
だって公開中の数十とか数百とかの映画から見たい作品を選り抜いて鑑賞に行っているのだから、どれもこれも順位の如何にかかわらず見所は少なからずあった!! 
以下、僭越ながら2013年の64本、ど〜〜〜ん!




1.地獄でなぜ悪い園子温


2.パンドラ ザ・イエローモンキー PUNCH DRANKARD TOUR THE MOVIE(高橋栄樹


3.クロニクル(ジョシュ・トランク


4.ゼロ・グラビティアルフォンソ・キュアロン
5.風立ちぬ宮崎駿
6.恋の渦(大根仁
7.ジャンゴ 繋がれざる者クエンティン・タランティーノ
8.セデック・バレウェイ・ダーション
9.横道世之介沖田修一
10.そして父になる是枝裕和


11.凶悪(白石和彌
12.ばしゃ馬さんとビッグマウス吉田恵輔
13.天使の分け前ケン・ローチ
14.シュガー・ラッシュ(リッチ・ムーア)
15.シュガーマン 奇跡に愛された男(マリク・ベンジェルール)
16.世界にひとつのプレイブックデビッド・O・ラッセル
17.ザ・マスター(ポール・トーマス・アンダーソン
18.嘆きのピエタキム・ギドク
19.キューティー&ボクサー(ザッカリー・ハインザーリング)
20.もらとりあむタマ子山下敦弘


21.ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(アン・リー
22.かぐや姫の物語高畑勲
23.イノセント・ガーデンパク・チャヌク
24.悪いやつら(ユン・ジョンビン)
25.セレステジェシー(リー・トランド・クリーガー
26.マン・オブ・スティール(ザック・スナイダー
27.遺体 明日への十日間(君塚良一
28.共喰い(青山真治
29.DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙のあとに何を見る(高橋栄樹
30.アイアンマン3シェーン・ブラック


31.ワールド・ウォーZマーク・フォースター
32.祭の馬(松林要樹)
33.悪の法則(リドリー・スコット
34.オン・ザ・ロード(ウォルター・サレス)
35.二郎は鮨の夢を見る(デイビッド・ゲルブ)
36.アフターショック(ニコラス・ロペス)
37.フィギュアなあなた(石井隆
38.LOOPER/ルーパーライアン・ジョンソン
39.パシフィック・リムギレルモ・デル・トロ
40.藁の盾(三池崇史


41.クラウドアトラス(トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー
42.ブリングリング(ソフィア・コッポラ
43.モンスターズ・ユニバーシティ(ダン・スカンロン)
44.フィルス(ジョン・S・ベアード)
45.ベルリンファイル(リュ・スンワン)
46.ムーンライズ・キングダムウェス・アンダーソン
47.ニューヨーク 恋人たちの2日間(ジュリー・デルピー
48.グランド・イリュージョンルイ・レテリエ
49.スティーブ・ジョブズジョシュア・マイケル・スターン
50.マラヴィータリュック・ベッソン


51.ローマでアモーレ(ウディ・アレン
52.殺人の告白(チョン・ビョンギル
53.麦子さんと(吉田恵輔
54.トランス(ダニー・ボイル
55.フラッシュバックメモリーズ3D(松江哲明
56.ハングオーバー!!! 最後の反省会トッド・フィリップス
57.許されざる者(李相日)
58.ロード・オブ・セイラム(ロブ•ゾンビ)
59.ジ、エクストリーム、スキヤキ(前田司郎)
60.リアル〜完全なる首長竜の日(黒沢清


61.ウルヴァリンSAMURAI(ジェームズ・マンゴールド
62.クロユリ団地(中田秀夫
63.四十九日のレシピタナダユキ
64.ベイビー、大丈夫かっ!! BEATCHILD1987(佐藤輝)

僭越(SEN-ETSU)1 〜 2012年の映画

お金も仕事もロクにないのに、足しげく映画館に通った今年でありました。


僭越ながら今年観た新作映画に順位をつけるとこんな感じ。



1.KOTOKO
2.キツツキと雨
3.ドラゴン・タトゥーの女
4.おおかみこどもの雨と雪
5.哀しき獣
6.桐島、部活やめるってよ
7.苦役列車
8.007:スカイフォール
9.アルゴ
10.フタバから遠く離れて
11.サニー 永遠の仲間たち
12.アベンジャーズ
13.その夜の侍
14.わが母の記
15.アウトレイジ ビヨンド
16.戦火の馬
17.悪の教典
18.ルビー・スパークス
19.CUT
20.黄金を抱いて翔べ
21.Pina/ピナ・バウシュ 踊りつづけるいのち
22.ダークナイト ライジン
23.かぞくのくに
24.人生はビギナーズ
25.J・エドガー
26.ギリギリの女たち
27.ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜
28.ミッドナイト・イン・パリ
29.愛と誠
30.ドライヴ
31.ザ・レイド
32.人生の特等席
33.ヒミズ
34.夢売るふたり
35.永遠の僕たち
36.踊る大捜査線THE FINAL新たなる希望
37.希望の国
38.北のカナリアたち


以下、各作品のこと


KOTOKO(塚本晋也
神経に針を突き刺すかのような瞬間の連打で約100分が過ぎた。血ミドロで、むき出しの、見てはならないもの。詰まる所、それが映画館で一番観たいもの。異常な女の肖像が普遍的な母と子の絆に昇華されていく物語の運びに失禁! 世界中の若者監督を寄せ付けないガンギマリにカッコいい編集術に戦慄! そして何より、Coccoという説明不可能な天才シンガーを完璧にレペゼンし尽くしている創意と愛情に即死完了!!!!



キツツキと雨沖田修一
私たちはくよくよしてばかりいる日本人だ。そして、映画が好きだ。これだけを端緒に、しかしはっきりとした太い線で物語が躍動していき、やがてすべてが、「お天道様」に回帰していく。キツツキや天気の視点から見れば、必死で切実な日常は可笑しみの詰まった点に過ぎない。手に職系ガンコ親父の役所広司からメンタル絶不調の映画青年・小栗旬、クソ生意気な高良健吾から端役に至るまでこの映画に現れる全員の人生が愛おしい。ライツ!カメラ!アクション!



ドラゴン・タトゥーの女デヴィッド・フィンチャー
タイトルにある狂人の出現に、登場人物が、そして観客が強張り、やがて登場したその異物にいつの間にか恋をして、恋をしたら物語が終わっていった……! 「相棒モノ」としての小気味よいグル―ヴ感。そして大量殺人の犯人捜しという大命題の先に用意された、人間・リスベットの悲哀と正邪の反転に、フィンチャ―さん、マジあざーす!と土下座しながら崇めたくなりました。ルーニー・マーラのリスベットは、ヒース・レジャーのジョーカーに匹敵する。



おおかみこどもの雨と雪細田守
公開一週間ですでに世評は固まっていたのですが、それでも疑いながら慣れないアニメ映画を観て、イタく感動。エラく納得。あまりにも荒唐無稽で、だけど観客の胸に据えられるリアリティ。それを支える配慮と謙虚。異生物との共生という家族奇譚が、三者三様、散り散りの未来をチョイスしながら幕を閉じるのが、もはや新しい古典! 31歳無職とて「おみやげみっつ、タコみっつ」と元気に唱えとけば無問題(モウマンタイ)。



哀しき獣(ナ・ホンジン)
『チェイサー』の監督&主演二人が新しい映画を作ったと聞いて「また追いかけっこ見れっかなぁ」なんて思っていたら、おい…おいっ……おいィィィ〜〜〜!!! 演出、演技、撮影、編集、あらゆるセクション、兎にも角にも「体力」で出来たこの映画。『マリオカート』すら凌駕するカーチェイスシーンでは劇場に若干の笑い声がこぼれる始末。歯を食いしばりながら叫び声をあげてスクリーンを揺らすような韓国ノワールの真骨頂!



桐島、部活やめるってよ(吉田大八)
この映画を見た者同士で会話をすると、すべからく全員が高校時代の罪過やその記憶を語り出すんだから怖い。俺たち、ゾンビみたいだってよ。観客への当事者意識の叩きつけ方が半端なく、ほとんど暴力。当然自分も前田君のハートブレークシーンでガツンと痛めつけられてしまい、以降ぜえぜえ息切れしながら鑑賞。ゾンビ映画のセリフ「俺たちはこの世界で生きてかなければならないのだから」が脳裡でゆらゆらと光り輝きつづける。



苦役列車山下敦弘
人のセックスをヒガむ奴を笑うなっ!! 運命を悔やみ、世間を呪い、恋はしぼんで、だけどそんな恥ずかしい青春にも創作の神様は降りてくる(つーか、落ちてくる)。ローパスの効いた声で非・モテキの只中にいる日雇い卑屈野郎を演じた森山未來さんは僕と1.5文字違いのスーパースターです。いけすかない奴とチャンネル競争になったらリモコンを折っちまえ! 敦っちゃん、マブ過ぎ! 脇役陣もみんな好き!



007:スカイフォールサム・メンデス
007を語る資格はミジンも無いですが、上海、マカオイスタンブール……と目にこびり付く格好良すぎシーンのルツボに脳がはしゃぎまくりスティ! 映画の主人公のカッコ良さに没入できちゃうなんて何以来でしょうか。鑑賞以降、入眠の際に思い浮かべるのはケダル過ぎるアデルの歌声(タイトルムービー、最高!)。ドラゴンタトウーも五輪もボンドも、思えば今年はクレイグの年。



アルゴ(ベン・アフレック
観ている間心拍数はあがりつづけた。スリリングで痛快。史実モノでありながら、映画からは「ヤング」な匂いがぷんぷん香る。シンプルな演出もいちいち功奏。レッドツェペリンとタバコにまみれていた時代のアメリカが眩しい。「どうしてこんなに面白い映画が撮れるのかわからない」というのは誰ぞやの『グラントリノ』への賛辞。“後継者”の渾身作にもその言がとてもよく似合うんじゃん。



フタバから遠く離れて(船橋淳)
原発は無くしたほうがいいと情緒がほとばしる間際に、それを阻害する様々な理屈が立ち並ぶ。それでもやはり感情の部分を優先して駆動させるべきだと、この映画は静かに促し、補助輪と化す。フタバから遠く離れて生きている(いく)のは誰なのか。特異な事態や存在を披歴するのではなく、事実を承認することを要請する、聡明で温かく批評的な素晴らしいドキュメンタリー映画をご馳走様でした。



サニー 永遠の仲間たち(カン・ヒョンチョル)
俳優のイキの良さと吹っ切れた可愛さが神がかりレベル。予定調和、かつスクリューボールに物語は突き進んでいくのだが、それがどうした! 観ていて笑みが絶えず、涙腺がどんどん緩み、「お願いだからこの映画よ、終わらないでくれ」と心の底から祈った。映画は観て幸せになるもの。そして心が弾むもの。そんな単純なことを思い出させてくれたサニー、サランヘヨ! 夢見る頃を過ぎても、エビバディ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン!!



アベンジャーズジョス・ウェドン
関連作品五本鑑賞というジス・イズ・付け焼き刃な事前予習が完了した頃にゃ、すでに3D公開が打ち切られていたという受難はさておき。総天然英雄色の早送り映像を2時間半見続けたような脳内バキバキ感。メリケンヒーロー達のヒッパレー! ヒッパレー! この2s観たい! あの3sも観たい! あいつのナイーブなとこや、あいつのイケすかないとこ観たい! そんな無限の欲求に対する完璧な応答! アベンジャーズよ、てめえらがアメリカだ!



その夜の侍(赤堀雅秋
職業の描かれ方が記号的過ぎるし、どうやら肝心な郊外・県道といった土地が映されないのに苛立ちもする。に・し・て・も〜、ここまで役作りにマゾヒスティックな俊英たちをよくぞ結集! 現在の日本で遣る瀬ない物語が作られている/それを見ているということにひしひしと昂奮しました。次回作が観たくてたまりません赤堀監督。ここまでやっても当たり前と思われる(=可哀想)堺雅人さんの演技もド級



わが母の記原田眞人
樹木希林がボケればボケるほど映画がどんどん面白くなっていくという魔法。一見安全な映画をスリリングかつコミカルに変える演技の鬼迫。タイトな編集もよかったし、姉妹がみんなかわいいし、役所広司宮粼あおいユリイカ!)をたっぷり観れたし、なんつってもキムラ緑子南果歩の叔母さん2トップ、最高! 純然たる大衆向け感動作が、そこからはみ出すことだって大いにある。いい涙が千代千代ぎれた。



アウトレイジ ビヨンド北野武
人物の眼光やシワに宿る陰影もまるで鉄や鉛のようで、溢るる漢気シズルに何度唾を飲んだろうか。ヤクザ映画の型に対する敬意と「裏切り」。そして、キャスティングや一連のプロモーションのすべてが客への巧妙な「罠」だった。超繊細な脚本にシビれまくり、いつの間にやら体がケイレンし、首をカクカクさせながら「野球しようか」と言いたくて言いたくて仕方がなくなっていたのです。こんなの「3」が見たいに決まってんだろバカヤロー!



戦火の馬(スティーブン・スピルバーグ
オッチャンに馬さえ貸してくれれば豪華キャストも3Dもいらねえから魂(だましい)、炸裂!! エクストリームな状況(戦争)にいる純真な存在(馬)、市井の人生に起こる想像を超えた奇蹟、そして、ゼッテーに戦争が大っ嫌いだぜ宣言! スピルバーグが、あまりにもスピルバーグ過ぎてヤバス! 『SUPER8』すら、馬のためのリハだった説、有力! 嗚呼、頬を染めるオレンジの夕焼け・イン・マイ・ヘッド!!



悪の教典三池崇史
ただの皆殺し映画であって、ただの皆殺し映画にあらず。原作のせいなのかはわかりませんが、クラス全員を殺す方法がほぼ猟銃(みたいなの)のみって! なのに全然飽きねえ! マバタキしない伊藤英明はそれだけで怖い! そして何より『愛と誠』同様、林田裕至さん&佐久嶋依里さんによる美術の仕事が素晴らしすぎた。あとはハスミンがEXILEさえ射殺してくれれば完璧だったのにいー。



ルビー・スパークスジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス
藤子F不二雄が『異色短編集』と称されるシリーズや『ドラえもん』でも再三描いた「人間が、人間以上の力を手に入れちゃったらそれはそれでタイヘンだよ〜!」というモチーフが、結構突きつめられたところまで物語にされていて、それを軽やかに表現していく俳優さんたちが超チャーミングでいい! いか様にも解釈が膨らむエンディングの自由度は観る側に創作を促している感。結局正解はわからないのだけれど、何せ恋愛が命題の映画なのだから仕方ない。



CUT(アミール・ナデリ)
劇場へ行ったらロビーでナデリ監督が鳩サブレを食いながらサイン会をやっていて、「可愛いオッチャンだなあ…」と思っていたら、トンデモナカッタYO!! 現在日本俳優界の至宝・西島秀俊フルボッコ。ヤクザ事務所の女バーテン・常盤貴子が注ぐ酒は何故かひたすら『一刻者』。挙句、でんでんと笹野高史を同じ画面内に並べる(!)という日本人監督なら絶対避けるようなアシッドな演出の数々! こびりつき度、ナンバー1!



黄金を抱いて翔べ井筒和幸
いま振り返っても、いい表情、いいシーンがものすごく詰まっていた映画だったなー。妻夫木聡浅野忠信の全仕事を俯瞰して、「あいつらの俳優としての資質はそんなんちゃうよ」と、苛立ちながら今作で憂さを晴らした監督の顔が思い浮かぶ。特に浅野忠信という、既に見慣れてしまった俳優に、2012年あらためて慄いた! ヤンキー社会の見せ方も、随一。男たちの馬鹿げたロマンが、リアリティをもって描き尽くされた怪作!



Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(ヴィム・ヴェンダース
眠眠打破』二本をもれなく必要とする映画監督―――僕にとってヴィム・ヴェンダースとはまさにそんな監督だったが、今回はまるで眠くならねえ!! 通説、打ー!破ー! 目からウロコがボタボタ落ちまくり、とにかく視覚が狂喜しつづけた。完璧なフレーミングとロケーション、そこに磨き抜かれた身体があれば万事オッケー(ローラ)! ああぁぁぁ、カンパニーの人たちが列をなして歩きつづける、あの輪の中に入りてえ〜!!



ダークナイト ライジング(クリストファー・ノーラン
核/原爆ナメんな論はさておいて、それでもどっぷり楽しめたぞ、『ライジング』! なんか追いこまれ方が、『ダイハード』っぽいっつーか、若造刑事の向こう見ずな突っ走り方も『踊る』っぽいっつーか、三作目ならではの急ピッチなてんこ盛り感はあったが、最後、墓場での後見人勢ぞろいショットでノックアウト! んでもって、なんつったってハサウェイ! ハサウェイに泥棒に来てもらえるよう頑張ろうと思った。 

 


かぞくのくに(ヤン・ヨンヒ
『GO』『パッチギ』が圧倒的な双璧としてあるのなら、だからこそ在日映画の空洞も大きい。共生など叶わず、ただただ断絶が横たわるのだということを抽出した監督の絶望と熱量。そんな煩悶の人生を血と骨にまで落としこんだ俳優陣。普遍的でないからこそ表現されるべき家族像があり、届けられるべき歌がある。安藤サクラ出演作品にハズレなし。「でもやるんだよ!」スピリットに満ちたラストショットが好きだ!



人生はビギナーズマイク・ミルズ
し、しかし……何故に、原題‘Beginners’に「人生は」を足しちまったのか……。まあそれはそれとして。語り白が少ない小品かも知れないけど、今後の人生でたまに思い出すんだろうなぁ、この映画を。寂しさが持続するラブストーリーってのは好きですよ。あとなんつっても犬! 今年の最優秀動物俳優賞は『戦火の馬』の馬と『人生はビギナーズ』の犬で間違いなく決まり!

 


J・エドガー(クリント・イーストウッド
アメリカを裏から牛耳ったド変態野郎の非・英雄奇譚! 特殊メイクの限界なんてイーストウッドに関係ねえ! リンドバーグさんの事件にあたふたしまくった後、あまりに不意にカマされる男同士のキスブチューシーンのBGMは「♪いますぐーキスミー(wow wow)」がマッチ! マザコンでゲイで妬み深いサイコ野郎。だが、そんな彼を決してゲスな愚者とは見なさない。深過ぎる愛で以って、20世紀米史についての寓意的更新が試されている。



ギリギリの女たち(小林政広
狂った長女・壊れかけの次女・憤怒の三女。慎みなく全員が言いたいことを言いたいだけぶっ放す。しかも被災地で。それだけで見てて面白い。姉妹を執拗に見つめ続けるカメラの変態っぷり。しかし、切ったり・貼ったりしない撮り方こそが小林監督ならではの礼節の感。鑑賞というより体験でした。渡辺真紀子の野蛮な顔力にすさまじい生の肯定性!



ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜(テイト・テイラー
最終復讐兵器・ウンコパイ! そんなシャレにもならないユーモアと、黒人蔑視が当たり前に浸透していたアメリカ南部のシリアスな現実が地続きに描かれるが、まるで破たんしないんだからスゴい。史実の中にあったはずの個々人の息遣いにすっかりトリコになりました。外の国・別の時代・小さな社会のお話なのだけれど、こうした歴史の上に現在があるのだということをつくづく感じさせるラストショットの長い道が粋。



ミッドナイト・イン・パリウディ・アレン
前情報で「ウディ・アレンのタイムスリップ物」と聞いて「???」だったが、夜中のパリで、「ヘイ!カモ〜ン!!」と誘われるがままに旧式プジョー車に相乗りしただけでバック・トュー・ザ・1920年代! あー、この肩透かしが喰らいたくてウディ・アレンの映画を観るんだったなあー。一方、透かしと裏腹に、先人達が芸術に賭した時代を讃え、愛を宣言するアツさも併せ持つ。シャイで粋なアレンさん。そら、モテるわ。



愛と誠(三池崇史
どんな俳優陣が選抜されるのか、ザックジャパンよりも日本映画最狂チーム=三池ジャパンに関心が向く。三池監督の作品群を貫くのは、「全員映画」とも呼ぶべきメンタリティー、それはつまり映画への「愛」と「誠」に違いなく。僕が学生時代に書いたレポートを読んでくださった余貴美子さん(自慢)はじめ、いい大人たちの悪ふざけ・オン・ザ・ランfeat歌謡曲! 2012年、浴びれるこんなけったいな映画に劇場で会えるだなんてさあ〜!



ドライヴ(ニコラス・ウィンディング・レフン
15年ぐらい前ならガンガンポスターが刷られ、Tシャツやバッヂが原宿やヴィレバンで売られまくっていたかも知れない。「ミニシアター系」という括りがほぼ消滅してしまったいま、こんな90年代終わりの匂いが充満する映画に会えただけでも嬉しい! 惜しむべくはスタントマンのシーン&犯罪者を護送するシーンが、あと一つずつでも多かったら良かったんじゃないですかね。ゴズリング兄貴、今後スカジャンを着る度、思い出すことは必至。



ザ・レイド(ギャレス・エバンス)
『強すぎ!殺りすぎ!敵、多すぎ!』というキャッチコピーが、もうそれで全てを言い尽しちゃっているぐらい、あらすじがない! 「そんなバカな!」の猛連打で、生まれて初めて見たインドネシア映画は幕を閉じた。ユンケルしこたまキメて敵のアジトに乗りこんできたSWAT陣に対し、オロナミンC一本で相手をおちょくるかのようなマッド・ドッグを演じたヤヤン・ルヒアンさん、今後どしどし日本のバラエティに進出してくれることを熱望します。

 


人生の特等席(ロバート・ロレンツ
同窓会に現れそうな外人女性ナンバー1・エイミーアダムスと、毒舌炸裂頑固ジジイ・CE巨匠に劇場で会えて嗚呼満足。大の苦手の野球だってこの人たちとなら見たい見たい。アメリカ的薄っぺらネスを一身に体現するジャスティン君もいい感じです。小品だけどもこういう苦もなく見れるアメリカ映画、小学校の時によく見たよな〜と思い出したり。小気味いいって大事だね。



ヒミズ園子温
ちゃんと映画化された『ヒミズ』が見たかった。あるいは、園子温完全オリジナルの被災地青春映画が見たかった。原作に忌避なく攻めに攻めまくった鋭意工夫・心意気にはコーフンしたものの、いろいろやりまくった結果、映画に「豪勢」な印象が備わってしまって、原作が本来持っていた「悲しさ」や「住田が絶対に届かない普通」がスポイルされてしまったのが残念。ラスト、住田と茶沢さんがザコ寝で超普通な未来を夢想するオニ名シーンも、二階堂さんのオッパイがあまりにも豪勢で、まるで悲しくないという皮肉。そんな中、渡辺哲演じる夜野正造が光り輝いていた!



夢売るふたり西川美和
「善と悪」や「虚と実」といった二分法に対する抗い。これこそ大好きな西川監督作品の醍醐味に思うのですが、今作にはそれが無く……。女性の気持ちを描くより、男の惨めったらしさとかを描いたほうがよっぽど才気を発揮できる女性監督ってのも希有かな。にしても、実景含め全カットが鮮烈でした。キャストもグンバツ。そういえば伊勢谷って、20世紀まではあんなヤカラでしたよね。そして何よりウェイトリフティングの彼女! 



永遠の僕たち(ガス・ヴァン・サント
今年はスタ丼みたいな映画ばかり観てきた気がするが、だからこそガス・ヴァン・サントのお吸い物のような薄味が映画体験として印象深い。死をモチーフにした物語で、加瀬亮扮する日本兵が登場するのはそりゃ強引な気もするけど、ファンタジーと現実の接点を視覚化する独特のセンスがサントおじさんの美味。英文学科かなんかに進学した世間知らずの箱入り娘(←苦手)が読みそうな米短編小説(←好き)の如き読後感。

 


踊る大捜査線THE FINAL 新たなる希望(本広克行
「ショカツ」対「本庁」という構図は、その後のTVや映画はおろか、現実社会にいたるまで日本人のリテラシーを刷新した部分すらあると思うんですが、当の『踊る』スタッフからショカツの意地が消え失せてしまい、だったらトコトンつまらなくしかないわなーと思ったのがMOVIE2を鑑賞した10年前。好事家からも「3は見るな」「3を見たら気が狂う」と戒厳令が敷かれ、まるで期待せずに観に行ったらけっこう‘食えた’んですけど……。いやいやバナナじゃなくって、FINALがよ。



希望の国園子温
震災・原発を扱うことで、結果、映画という表現手法の可能性を自ら窮屈にしちゃってる感。だったら報道やドキュメンタリーのほうが鑑賞者としての意識はよっぽど発露する。ただし中盤までは、まるで遥か過去のような震災直後の憂鬱な記憶が眼前に迫り来るようなスペクタルがあった。ストーリー上の夏八木勲の末路によってこの映画に‘ノレない’としたら、それはそれで園子温の術中なのでしょう。これからも憎まれっ子監督がガンガン世にはばかることを。



北のカナリアたち阪本順治
天下の大女優を使って、撮影監督の手腕・大見せつけ大会の巻。どうしても豪雪地帯じゃなきゃダメっすか?? 現在〜回想〜現在〜回想∞……の構成もクド過ぎるし、殺人だの、不貞だの、犬ぶん殴りだの、全員の罪がユル〜く許されちゃっていくため、礼文島が無法地帯に! でもね、見終えて損した感じは御座いません。見ごたえは十二分。出演者の気概は畏怖の域。特に小笠原弘晃君の天使の歌声ったら!



僭越でしたが。

たけしさんの夢

 俺は自転車を漕いでいた。子供の頃から数百、数千回と通ったはずのその歩道には、まったりとした温和な陽光が射し、街路樹によるものか、それとも信号機や電柱のせいなのか、時折影が頭上をよぎった。
 視界に映る景観からして、この季節が春の真ん中か秋の始まりと推定することが出来た。だが、そのどちらであるのかをはっきりと判別することは難しい。季節がどうあれ、確かなのは、俺が警察官でありパトロール中であるということだった。
 自転車を漕ぐ速度が少し早かったかなと気にかかり、ふと後ろを振り返ると、たけしさんはちゃんとついて来てくれていた。
 やや前屈みに自転車を漕ぐ制服姿のたけしさんはまるで息が上がっていない様子で、安心すると同時に、その強壮ぶりに感服もした。俺の両親よりもたけしさんは年長のはずだから、既に六十を超えているには違いないのだが、自転車を漕ぐ姿に年齢相応のくたびれたものは一切感じられない。精気みなぎるその漕ぎ姿は、世間から遊離した芸能の世界で長らく自らを人目に晒し続けてきた、たけしさんの人生を物語っているようだった。
 子供の頃、テレビでタケチャンマンを見た記憶はあるのだが、さほど明瞭ではない。それに較べて「たけし城」や「元気が出るテレビ」であれば、いくつもの場面を鮮やかに思い出すことができるし、竹下通りの路地にあったグッズショップには何度も訪れた。「たけしが大変な事故に遭っちゃったのよ」と言う母親のけたたましい声に起こされたのは中学の頃。約二カ月後の退院会見の凄まじさは、中学生の脳内で処理できる映像としての限界値を優に振り切っていた。そのトラウマが消える間もない数年後、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したというニュースに、高校生の俺は激しく昂奮させられ、映画館で初めて北野映画を鑑賞した。
 そしていま、俺を追走してたけしさんが自転車を漕いでいる。ペダルを踏んでいる両脚はやはりどこかガニ股であるし、それを見れば抑えがたい高揚が沸いた。



 俺が勤務している警察署にたけしさんが署員としてやって来るという噂が出始めた時、当然真に受け止めようとする者など一人もいなかった。だが、日が経ってもその噂は潰えず、俺も含めた署員たち全員にざわめきが絶えなかったので、いよいよ箝口令が解かれ、ある日の朝礼で上司から正式な発表が為された。
 上司曰く、たけしさんご本人たっての希望で、随分と前から代理人による再三の懇願があり、本庁とも秘密裏に体勢を整えていった結果、署員として受け入れることに至ったのだと云う。たけしさんの志望理由として、これまでビートたけし北野武という二つの名義を使い分けて生きてきたが、どうにもその二つの人格に依ってだけでは埋めようのない自身の存在に煩悶するところがあったらしく、第三の生として警察官としての職務に従事したいとのことだった。
 そのため、警察業務の際には「北野たけし」という名称を使用するということが通達された。本名以外の表記が登用されることは異例だったが、上層部も含め誰も異議を唱える者はいない。また、たけしさんが警察署に勤務していることは、決して口外してはならないし、一切タレント扱いしてもならないと厳命された。
 緊迫した朝礼が終わると、同僚のうちの一人が
「お願いしたらコマネチとかやってくれるのかなあ」
と、いかにも陳腐な着想の戯れ言をほざいた。
 そして数日が経ち、たけしさんは現れた。
 朝、上司の後に続いて俺たちのいる署内の一室に入って来たたけしさんは、猫背でうつむいたまま照れ笑いを浮かべて後ろで手を組んでいる。
 全員の前に上司と並んで立ったたけしさんから簡単な挨拶があったが、喋り口は極端に謙虚で声も小さく、仔細までを聞き取ることができなかった。
 朝礼が終われば俺は午前中のパトロールへ向かうことになっていたが、上司の計らいでたけしさんも同行することになった。



 パトロールしているエリアの一角にある公団住宅で俺が自転車を停めて降りると、たけしさんもそれに倣った。
「このまえ、ここで一人暮らしをしてるおばあちゃんから空き巣に入られたという通報があって。結局、そのおばあちゃんの勘違いだったんですけど、念のため伺いたいとおもいます」
「ああ、ええ」
 たけしさんが、ぼんやりとした声で返事をする。
 四階建ての公団住宅は、のっぺりとした横幅が長い造りで、一階の左右に出入口があり、中央に階段がある。かつてここには、俺が小学校の時に通っていた塾の友達である渡辺君が住んでいたが、最近は住人の高齢化が進み、空き部屋も多いようだ。はっきりとは確かめていないものの、渡辺君がもうここに住んでいないということは明らかだった。
「ここらへん、ほとんど僕の地元なんですよ」
「ああ、そうなんですか。いいですね、静かで」
「たけしさん、足立区ですよね」
「あ、そうです。足立区のね、北千住ってところで」
 たけしさんは鼻の頭を人差し指の関節で撫でながら親切に答えてくれたのだが、あらかじめ俺が出自を知っていることについて、不快な思いはされなかっただろうか。ついつい出過ぎた真似をしてしまったと、自責の思いがこみ上げる。
 出入口から、正方形の取っ手の付いたガラスの押し戸を開けて中へ入れば、セメントの廊下を挟んで左右対称に部屋が連なっている。例のおばあちゃんは一階に住んでおり、右側の並び、手前から四つ目の部屋に暮らしている。
「ここです」
と、たけしさんに告げてからベルを鳴らしたのだが中からの反応はない。声を出して部屋の中に呼びかけてみても一向に返答はなく、だが、普段滅多に外出することのないおばあちゃんだったので、即座に留守と判断して引き返すには、若干の引っ掛かるものがあった。
 ふと、いま入って来たのと逆側の出入口の向こうに共同の庭のようなものがあることに思い当り、そういえば以前もそこで水遣りをしているおばあちゃんに遭遇したことがあった。
「たけしさん、すいません。僕、向こうの庭見てくるんでここにいてもらっていいですか」と頼み
「ええ、はい。どうぞ」と、たけしさんがつぶやくと、俺は逆側の出入口へ向かった。
 廊下の半ばを過ぎたあたりで、俺はガラス扉の向こうに紫色の派手なシャツを着た男の姿があることに気がついた。男の顔は薬師寺保栄デビッド・ボウイの両人を想起させる、どこか性別不詳の様相だったが、かつて出会ったことがあったのか、俺はその顔を見るなり既視感を煽られた。
 次の瞬間、その男が先日起きた殺傷事件の指名手配犯であることに閃いた俺は、ぶるっと体を震わせた。
 俺は踵を返し、たけしさんの元へと駆け寄っていく。
「たけしさん、隠れて」と、犯人に悟られぬほどの声で、手の平を外側に寄せるようなジェスチャーを取りながら示すと、勘の鋭いたけしさんは、すぐさま中央にある階段の窪みに身を潜ませた。
 慌てふためきながら俺もそこに身を忍ばせたが、あの男は俺に気がついたのか、いないのか。
「たけしさん、向こう側のドアのところにいる男、こないだ起きた殺人事件の犯人なんです」
「え?」
 するとふいにたけしさんの目つきは鋭くなり、神妙に眉間を力ませた。
「逮捕、するんですか」
「いや、もしかしたら何か武器を所持している可能性もあるんで応援を呼ばないと……」
 俺がたじろぎながら肩に架かったトランシーバーを取ろうとすると、たけしさんは階段の窪みから僅かに顔を出し、向こうにいる男を確かめているようだった。
「こちらパトロール中のコヤマ、誰か取れますか?」
 早口で俺はトランシーバーに話しかけるのだが応答がない。
「もしもし、こちらコヤマ、誰か取れますか?」
 俺の鼓動は早まり続け、「誰か、誰か」と、つんのめった声が口をついて出る。すると、たけしさんが
「おいら、ちょっと行ってきます」
と、突如廊下に飛び出し、犯人のいる方角へと走り出した。
 慌てた俺は階段から上半身を突き出し、たけしさんを止めようと腕を伸ばすのだが、思いの外たけしさんの勢いは早く、到底届きそうにない。
 たけしさんの大きな背中は獰猛で、俺は、雪が舞う海っぺりの町をたけしさんが暴れながら走りまくる「夜叉」の1シーンを思い起こしていた。
 突進するたけしさんの向こう、扉の外にいた犯人は走り来る警察官に気がつき、ドアを開けて団地へと入って来たのだが、突き出した右手には握られているものがあり、それは拳銃だった。
 そして、鼓膜が破裂するかのような銃声が公団住宅に轟く。
 真正面から拳銃をぶっ放されたたけしさんは、両手を広げ上半身をのけ反らせながら、背中を打ちつけるようにコンクリートの床に倒れ込んだ。
 それを一瞥した犯人は不敵に笑い、さらに俺と目が合うと睨み付け、そのまま去って行った。
「たけしさーん!」
 大の字で仰向けに伏したたけしさんの元へ俺は走り寄っていく。
「たけしさん、大丈夫ですか。たけしさん!」
 両肩を掴み上半身を揺らすが、たけしさんの着る卸し立ての制服には胸元から朱色が滲み、徐々に広がっていく。
 ゆっくりと目を開けたたけしさんは、かすれた声で
「すみません、勝手な真似しちゃって」
と詫び、照れ笑いを浮かべた。
 銃弾は心臓に直撃しているだろう。なのにたけしさんは、痛がることもなく見るからに平静を保っている風で、死の間際にして異常とも呼べるその豪胆な態度は「たけしだから」という言葉でしか説明がつかないように思えた。
 両腕でたけしさんの背中を支えながら、
「いま救急車呼びますから」と俺は言ったのだが
「呼ばなくていいよ。ここに当たっちゃったら、どうせダメだよ」
と、たけしさんは苦々しく笑いながら、すでにはっきりと諦めているようだった。
 仮にここで俺が救急車を呼んだら、事はたちまち甚大な騒ぎと化すであろう。ただ一人の警察官が撃たれたというレベルの騒ぎで済むはずがない。日本全土を巻き込んだ騒ぎになるのは必至だし、おそらく国外にも報道は流れるだろう。そんな事態が巻き起こった際、有象無象の関心の的として注視されるのはただ一人、今日から警察官としての人生を歩み出したたけしさんなのだ。たけしさんが味わうことになる恥ずかしさや気まずさを思えば、俺は救急車を呼ぶことに退行的な気分にならざるを得なかった。
 容態に刺激を与えないよう、俺はなるべく声のトーンを落として
「奥さんとか、電話しましょうか」と訊いたのだが、
「カミさんは、いいよ」と、たけしさんは首を振る。
「軍団のどなたかとか……もし伝える必要があれば……」
「あいつらも、いいよ」
 俺はこれまでに何度も、たけしさんが自らの死について言及しているのをテレビや雑誌で目にしたことがある。「芸人なんだから、死に方はくだらないのがいい」などといった類いの発言をよくされていた。だとしたらこの死にざまは、どれぐらい理想に叶ったものなのだろうか。今日から警察官となり、初日のパトロールでいきなり撃たれたというのは、どれぐらいくだらないだろうか。芸人らしいだろうか。
 おそらくこの死に方を世間は笑わないだろう。むしろ、ここまでのキャリアにありながら、密かに警察官として生きようとしていたたけしさんの哲学に様々な分析や言説が飛び交い、特殊な生を指向した天才の感動譚として大仰に語られていくだろう。俺にはそれが悲しく思えた。
 すると、俺とたけしさんの傍らに、DVDデッキとプロジェクターが置かれていることに気がついた。いつのまにか、壁には家庭用のスクリーンまで吊るされている。何の疑問も抱かず、俺はデッキの再生ボタンを押した。
 やがてすぐに「I’ll be back again…いつかは」が流れ始め、黒い背景に白い明朝文字の名前がスクロールしていく。どうやらこれは、映画のエンドロールのようだ。
 「ビートたけし」からはじまって「岸本加代子」「大杉漣」「寺島進」など、いわゆる北野組の常連俳優の名前が流れていくスクリーンを、俺の腕に凭れたたけしさんは、柔らかな表情で見つめていた。
 「柳憂怜」「芦川誠」「モロ師岡」………さらに何人かの名前が流れ、キャストの名前が終わったところで、外国の映画監督らしき誰かと、たけしさんのツーショット写真が映された。
「ああ、ヴェンダースさんだぁ…」
 たけしさんの声はか細く、しかし思い出の美しい一片を噛みしめているようだった。
 その後も、黒澤明今村昌平深作欣二大島渚といった名だたる日本人監督や、さらに世界各国の映画監督とたけしさんが並んで写る写真が次々に映写され、たけしさんは、ぼーっとそれを眺めている。
 連続して映されてきた写真が途絶え、俺は間もなくエンドロールが終わるのを予感する。そして、おそらく最後は、「監督 北野武」で終わるのだろうと。
 だが、最後に現れた名前は、俺が特に好きっていうわけでもない日本人映画監督の名前で、せっかくたけしづくめの夢が見れたのに何だかなあという、いやはや締まりの悪い感じで目を覚ましたのでした。

 
 

炸裂(SAKU-RETSU)5












和デ歌ジ山(WADEKAZIYAMA)


SAKU−RETSU 5











06:27 SHINAGAWA
08:08 NAGOYA
11:39 KII-KATSUURA














生物分類上は、イルカとクジラに差はない。(マジで?)
イルカが、かわいげに撮れるアングルは少ない。(マジで)






笑ってら(多分)。



橋杭岩(はしぐいいわ)

串本から大島に向かい、約850mの列を成して大小40余りの岩柱がそそり立っています。その規則的な並び方が橋の杭に似ていることからこの名が付きました。



橋杭岩には次のような伝説が残っています。



昔、弘法大師が天の邪鬼と串本から沖合いの島まで橋をかけることが出来るか否かの賭けを行った際、弘法大師が橋の杭をほとんど作り終えたところで天の邪鬼はこのままでは賭けに負けてしまうと思い、ニワトリの鳴きまねをして弘法大師にもう朝が来たと勘違いさせたのです。弘法大師は諦めて作りかけでその場を去りました。そのため橋の杭のみが残ったと言われています。



伝説だら県、和歌山






紀伊半島の輪郭をなぞるように、42号線を行く。








山が呼吸しているように見える。



高野山








歴史に無知な自分でも、上杉謙信織田信長武田信玄、石田光成、明智光秀……それぐらい有名な名前なら知ってる。

んで、ここにはその人たち全員の墓がある。



伊達正宗之墓 in the 土砂降り






下山はまさに、SAMURAI DRIVE





熊野本宮大社






花の窟(いわや)神社





熊野速玉大社




神倉神社





熊野古道







二礼二拍手一礼で日が暮れて。













NANKIKUMANOSAKU−RETSU



1.熊野本宮大社/2.橋杭岩/3.blank/4.夕景(場所不明)/5〜8.南紀8号・車内/9.10.紀伊勝浦駅前/11.駅レンタカー店内/12〜14.太地町くじら博物館・展示/15〜21.くじら博物館のイルカ/22〜25.橋杭岩/26.27.橋杭岩・遠望/28.29.橋杭岩上空の鳥/30〜32.イノブータン王国前/33〜35.車窓/36〜43.高野山/44〜47.車窓/48.窓/49.鮎釣り/50〜53.熊野本宮大社/54〜56.花の窟神社(三重県)/57.58.熊野速玉大社/59.60.神倉神社/61.神倉神社からの眺め/62〜65.熊野古道/66.blank/67〜69.夕景(場所不明)

挑発(CHO-HATSU)5








「去(い)った夏」
























ゆきさん


貴女のことが大好きです
全くそのお年を感じさせない
美しい肢体
髪に触れただけでもれる吐息
艶やかな長い黒髪
その清楚な容姿から想像できない
喘ぎ声
ふっくらとした唇で大胆に
僕のそれを愛撫する様
すべてエロチシズムを感ぜずには
いられません
これからもいっぱい愛し合いましょう


NEW DAYSの○○締り最高



ゆきさん



貴女のことが大好きです



全くそのお年を感じさせない美しい肢体



髪に触れただけでもれる吐息



艶やかな長い黒髪



その清楚な容姿から想像できない喘ぎ声



ふっくらとした唇で大胆に僕のそれを愛撫する様



すべてエロチシズムを感ぜずにはいられません



これからもいっぱい愛し合いましょう



ゆきさん



ゆきさん



ゆきさん



ゆきさん!



ゆきさん!!



ゆきさん!!!



すべてエロチシズムを感ぜずにはいられません!!






これからもいっぱい愛し合いましょう!!






これからも!!!!





いっぱい!!!!























夏が去(い)った



夏は去(い)った



夏が去(い)った



挑発5



◆◆◆



1〜3.アパート前坂道/4.花房山通り/5.近隣のマンホール/6.花房山通り脇/7.チネ/8.月見ル君想フ�/9.アイポッド�/10.浅草の技術会社/11.近隣の電線/12.麻衣子のタバコ/13.浅草寺参道/14.江戸川橋界隈/15.月見ル君想フ�/16.五反田駅電光看板/17.トイレの落書き/18.近所のミロのヴィーナス�/19.近所のミロのヴィーナス�/20.近所のミロのヴィーナス�/21.タクシーの提灯/22.工事の標識/23.山手線(五反田の歩道橋で)/24.江戸川橋の空/25.神田川飯田橋江戸川橋間)/26.アイポッド�/27.月見ル君想フ�/28〜33.渋谷/34.35.五反田駅前バス停/36.月(目黒駅前で)/37.旧ソニー通りを臨む/38.近所のミロのヴィーナス�/39.近所のミロのヴィーナス�/40.41.42.花房山周辺/43.チネ、噛む/44.月見ル君想フ�/45.新文芸坐今村昌平七回忌特集にて

炸裂(SAKU-RETSU)4






第十八共徳丸


鹿折唐桑気仙沼







炭酸ランキングに異変が!


長らく一位の座にあった三ツ矢サイダーが、遂に一位の座を受け渡す。


そのマスカットサイダー、最高につき。


鹿折復幸マルシェ,気仙沼










八幡神社


松崎中瀬,気仙沼







俺ら岬の 灯台守は
妻と二人で 沖行く船の
無事を祈って 灯をかざす
灯をかざす





星を数えて 波の音きいて
共に過ごした 幾歳月の
よろこび悲しみ 目に浮かぶ
目に浮かぶ


(「喜びも悲しみも幾歳月」)

















「壊滅」という言葉の横柄さと、そうとしか呼べない眼前の光景と。


陸前高田市役所庁舎,陸前高田







 その町は知っていた。
 あのキャスターの声で。
 あの新聞のインク字で。
 あのネットの電光文字で。
 土地を踏み、ニオイを嗅ぎ、息を吸い、ついにその町が像を結ぶ。
 像を失くした町が。耳で空鳴る町の名前が。やっとここで像を結ぶ。
 その町のことは、そうです、いまさら訪れてもその町のことは、

 何も知れない。






ユーミンの言葉でいえば、「悲しいほどお天気」


















knock, knock, knockin' on heaven's door 





knock, knock, knockin' on heaven's door





knock, knock, knockin' on...





加茂八坂神社,大船渡


















濃い青の上で、カモメが謳う。



大船渡湾

















志津川南三陸町


デジカメの電池が切れてしまい志津川では二枚の写真しか撮ることができなかった。志津川の駅へ行くと、驚くべきことに「そこにホームがあった」。初めて目にしたホームは、すでに多くを欠いているし歪んでもいる。コンクリが隆起していて点字板が踊っているように曲がっている。それでも「駅にホームがあった」。「駅にホームがあること」に驚いているという奇異さがまずある。震災の後、何度か志津川駅を訪れたが、そこにホームがあったことはない。ホームのない駅は「まるで駅の証左のない駅」だった。だが現在、志津川の駅にはホームがあった。たぶん誰かが土砂をかき、それは現れた。この町を覆った巨大なかさぶたの、ほんの一かけら(その全体は途方もない)が剥がされた。表出した志津川駅のホームは、そんな風に目に映った。

















皐月の東北,太平洋サイド。

いたる所で牡丹桜が咲き誇る。





またここに来た。





日和山公園


日和が丘,石巻







EVER GREEN, NEVER SEEN.





公園と隣り合わせに鹿島御児神社がある。







祭囃子が聞こえる。




















血で、
      肉で、
            肌で、
                  心で、



何が祭りか知っている。







SAKU-RETSU 4








MY FAVORITE TOHOKU(わたしの好きな東北)









1〜3.陸に乗り上げた船(DS)/4.5.陸に乗り上げた船/6.気仙沼Ⅰ/7〜9.復幸マルシェ/10.気仙沼Ⅱ/11.12.八幡神社までの道/13〜15.八幡神社/16.17.八幡神社からの眺め/18.八幡神社・階段/19〜22.陸前高田市庁舎/23〜25.陸前高田市庁舎周辺/26.陸前高田市庁舎(ロング)/27〜31.加茂八坂神社/32〜34.大船渡港/35.大船渡のカモメ/36.37.志津川駅にて/38.桜(日和山公園)/39.足元(日和山公園)/40〜44.日和山公園/45〜47.鹿島御児神社/48〜52.清める人/53〜81.鹿島御児神社・祭りの光景/82.日和山からの眺め