犬よこせ


まだ猫の町にいる。



結婚相手とかいらない。



犬をよこせ。


■午前中、八さんと電話。つかの間、不安から逃れるが土曜日の本番のことを考えてもやはり不安だ。


■昼飯は小さめのサンドイッチにしたが、半分も食べられない。その時におとといから食事を残し続けているということに気づいた。
これはヤバイ。
頭の中も言葉がうろうろする。取材についての逡巡がほとんどだから過度のぶっ飛んだ妄想みたいなものはないのだろうが、たいして眠りもせずここまで物を考えて食欲まで落ちるのはヤバイ。


■持ってきた構成など、そのほとんどが役に立たなかった。やはり取材対象者は感覚で出来ている「天才」だった。20年間、スーパーの中でアートみたいな野菜を並べ続けた「天才」を10日間で理解しようとしているのだ。無茶だ。
天才は理屈で動いていない。ただその説明を収録したテープをホテルで見て次の日言っていたことを確認すると膨大な整合性が発見される。頭がおかしくなりそうになる。


■至急チルアウトせよ、京都。
撮影現場近くを散歩すると、猫の町で意外にも多くの犬に出会った。


■「チッタ撫でてーチッタ撫でてーチッタ撫でてー」と頭の中で連呼していたら言葉が消えていき穏やかな気持ちになった。
‘京都有線ディスコ’に戻れば人の乱心を察してか『イージューライダー』が流れていて、あらためて有線ディスコの凄さをおもいしる。


■今日もまたこの町を好きになってしまった。本音なら帰りたくない。帰って編集などしたくない。それは駄目だ。どうしても「天才」を丁寧に伝えるのだ。